Tacx NEO Smart T2800が一足先に手元に来たので使用感レビュー

この春日本に入ってくる新型スマートトレーナー
Tacx NEO Smart T2800
のサンプルを入手したので使用感などレビューしてみます 

正体はZwiftのTOPページのあのトレーナー

ZwiftのTOPページバックグラウンドで流れているムービーの中に登場するトライアングル型のトレーナー。ずっと謎だったトレーナーの正体がこの製品、というわけですね。

zwift.com

TacxもTacx Trainerという独自のバーチャルトレーニングアプリをリリースしていますが、ZwiftでもTacx Trainerを利用した場合でも、T2800の使用感はかなりのもの。Zwiftはユーザーの多さが魅力ですが、iPadなどにも対応しているTacxも侮れません。

Tacx Trainerはライダー視点であるのに対し、Zwiftはライダーの後方からのビューとなるため、ケイデンスのシンクロ具合が良くわかって非常に楽しく、いかにもゲームといった感じ。

一方Tacx Trainer やTacx Filmsは非常にグラフィックに力を入れている風で、よりバーチャルにツーリングをしている気分になれるでしょう。
その他、対応バーチャルトレーニングアプリ:
http://www.tacx.com/en/products/trainers/neo-smart#tab_3

バーチャルトレーニングアプリはまだまだ各社過渡期市場なため、今後の展開が楽しみです。

セットアップは非常に簡単。スプロケをつけたら、あとはリヤホイールをはずしてトレーナーに設置するだけ。

さて、早速箱を開けて使ってみます。

セットアップはあまり深いことを考えずにやってしまう。
畳まれて箱に収まっている本体を引きずり出し(43サイズの靴と並べました。サイズ感はこんなもん)、

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トライアングル状に開いたら見慣れたフリーが付いているので、そこに乗せる自転車のドライブトレインに合わせたスプロケをつける。

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フライホイールについているフリーはShimano、Campagnolo両対応の優れものフリー。(これ市販されてほしい。。。)
ただし、CampagnoloのCentaur以下のグレードのスプロケには対応していない模様。カンパユーザーは念頭に置いておきましょう。
http://www.tacx.com/en/products/trainers/neo-smart#tab_4

IMG 0847

フリーにスプロケを装着するとき、特にフライホイール部はロックしてくれないので、いつものスプロケ外しを逆に持って締める、というめずらしい使い方をする。こんな使い方はこんなときにしかしないだろうと思う。

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スプロケをつけたら、本体との合体は「地面に固定してあるホイールにフレームを載せる」といった感じ。付属のクイックを締めたらトレーナーと本体は接続完了。

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少しこぎながらトレーナーアプリを起動すると、Zwiftなどは、

GARMIN ANT+ USBドングル

を使えばおなじみのセンサーチョイス画面から難なくリンクアップしてくれます。スピード、パワー、ケイデンスを計測しているので、あとは心拍メーターさえあればフルセンサーでZwiftを楽しめる。このあたりは普段Bluetooth系のセンサーを使っている僕にとっても、混線したりしなくてありがたい仕様でした。

Zwift

Power Source、Cadence、Controllable TrainerのセンサーがT2800によって埋まります。Heart RateはBluetooth、ANT+両対応のMIO Fuseを愛用しています

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あとはフロントホイールを付属のアタッチメントに乗せればセットアップは完了。すぐに走り出せます。

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また、Zwiftなどでコースに合わせた負荷の変化を楽しむような使い方だけではなく、スマホのTacx Trainingなどを利用すると、手動で勾配エミュレートの値を変更することができます。

数%の坂をエミュレートしてひたすら練習、などといった使い方も容易にできるので、あまり環境に左右されたくないストイックなトレーニングを希望する人にも。

T2180 vortex smart 4

それだけではなく、Tacx TrainingはこのT2800のコントローラーになるような存在なので、必ずダウンロードしておきましょう。ゆくゆくのファームアップなどもこのアプリ経由で行うことになるはずです。

Kinetic Rock & Rollでおなじみ。流行りのダンシングも可能。幅広いライディングが行える。静音性もかなりのもの。

形状的になんか「乱暴に扱ったら壊れる?」といった不安が残るような感じだけど、実際には本体は剛性もかなり高く、何より重い。よほどのライディングを行わない限りはひっくり返ったりはしなさそう。(そもそも固定ローラーでひっくり返るというのは絶望的にやんちゃな乗り方をした時くらいだとは思うけど)
そして、Tacxは他のトレーナーでもそうだという話があるけど、程よく遊びを設けてあってダンシングも可能。ちょうどKineticのRock & Rollと同じような振り感で「すごく自然なダンシング」ができるわけではないが、それなりに左右の動きを殺さずにいなしてくれます。
フレームにも優しいだろうといった印象。

そして、かなりのハイケイデンスで回しても音はかなり静か。
某トレーナーの「家族3人が一緒に回しているのに同じ部屋で猫が寝ている」というような環境とは程遠い(あのプロモーションもやりすぎだと思う。そんなに静かになるはずは、ない)が、通常のローラータイプのトレーナーに比べれば、音は非常に静かです。

音はこんな感じ。何より振動があまり出ないので、あまり時間を気にしなくて良くなるのは大きい。

そしてダンシングや、多少もがくなどのエクストリームなライディングをそれなりに心地よくいなしてくれるというのは、このカテゴリの製品には非常に重要なことだと気付かされる場面がありました。

なぜならば、バーチャルトレーナーではこの製品にまたがって「時には誰かと競争するような(心の)モードになる」ことがあるからです。
バーチャルだろうがなんだろうが、画面上に「自分より少し速いかもしれない人」を見かけてしまったら、付いて行かずにはいられないのがロード乗りの宿命です。どんなに普段ファンライドを地で行く人でも、この本質にはそうそう抗えないと思います。
そんな心のスイッチが入ってしまった時に、エクストリームなアクションを許容してくれるか否かは、このカテゴリの製品の優劣を決める非常に重要なポイントなのです。(モニター中に心から実感したので、強く主張します。笑)

登りのエミュレートだけなら電源無しでいける。勾配エミュレートは-5%〜25%

Zwiftをはじめとしたバーチャルトレーニングアプリを使用している中で、勾配に差し掛かると連動してローラー負荷が変化します。これが近年流行のスマートトレーナーというわけですが、T2800の対応範囲は-5%〜25%。プラス勾配側の切り替えはなんと電源を差し込まずとも行えます。最低限の電力は回転力からのダイナモ発電でまかなっているのだろうか?電源も何にも差し込まずとも、ローラーを漕ぐだけでANT+やBluetoothのLINK LEDが点灯します。

一方、下りや平地での慣性をエミュレートするには電源が必要となります。
あと数年もしたら、漕いだ際にダイナモで蓄電し、ある程度の距離の下りや慣性のエミュレーションを行うような機構ができるのかもしれない。ハイブリッドカーと理屈は一緒で。

また、下りエミュレーションの最大が-5%であるため、マップエミュレーションなどで-5%を超えるような下り坂に差し掛かると、-5%的な動きをします。(登りも例外ではないけど、25%を超えるような上りに出会うことは滅多にないのでそんなに心配いらないし、25%を超える上りなんてそもそも僕は登れない。。。)

そして今回サンプルで届いたT2800にはなんとUS・EU仕様の電源ケーブルが入っていた!w
海外通販などで手に入れる予定の方は十分注意するとよいだろう。(変換アダプタはAmazonで1,000円くらいで買えるし、AC側はメガネ型のコネクタなので、代用品は世の中に溢れていてそんなに心配らないが。。。)

クソ高い本体を買ってよかったと思わせる(かもしれない)拡張アクセサリー

このT2800は、本体はクソ高いものの、アクセサリー群が非常に充実していて、さらに本当はコスパがとてもいいTacxなだけあって、アクセサリーは非常に安い。
ローラー台ユーザーにはおなじみのスウェットカバーやマットはぼったくりKineticなどのほぼ半額のMINOURA並みだし、ディスプレイスタンドはハンドルにつけるタイプと前に置くスタンドタイプの2種類を用意。

Tacx

さらに!フロントホイールを載せる台をインタラクティブなものに変更可能で、この台を導入するとバーチャルトレーナーでハンドリングの反映が行えるのだ(現在はTacx Trainer Softwereのみの対応)。これも非常に面白い特徴。しかもそんなに値段もしないので(本体に比べれば)バーチャルツアーにすっかりハマってしまった人には垂涎ものだろう。
アクセサリ一覧 http://www.tacx.com/en/products/trainers/neo-smart/accessories-neo-smart

総じてどうなの?

バーチャルトレーニング自体はまだ始まったばかりのサービスだが、それまでにあったスマートトレーナーの価値を大きく引き上げられたという印象で体験の新しさは十分。
ただ、一番ユーザー数の多いと思われるZwiftは、ロードバイクでそれなりに走れるくらいに体や心肺ができあがってないと、正直ちっとも面白くないかもしれない。(みんな速すぎて)
一方で雪国の冬や、都会に居を構えていながら、信号だらけの路上でストップ&ゴーにうんざりしている人にはぴったりのカテゴリだと思います。
20万円そこそこで、人間が「楽しめる」レベルでの最新鋭のトレーニングマシンが手に入ると言っても過言ではなく、様々なトレーニングプログラムが用意されているので、本当にこれからロードバイク向けに体を作っていこうとしている人に対しては十分な実用性を感じられるはず。(僕はT2800を使っていて生まれて初めてFTPが楽しいと感じました。笑)
言うなれば、あなたがただの自転車ゲームを買おうとしているならばT2800は過ぎた投資(自転車にスピードセンサーとケイデンスセンサーさえついていれば、Zwiftを楽しむには普通のローラーで十分だと思う)だし、本格的なトレーニングコンピュータを導入しようという心持ちならば十分にお勧めできる。ということでしょう。

 

ちなみに今国内からT2800を手に入れようと思ったらWiggleかCRCが一番早い。値段もレートで乱高下しているけど、16万円前後で落ち着くようです。
国内サイトはまだまだ取り扱いが薄く、いつ入荷してくるかはっきりわかっている店舗は少ないようですね。

Wiggle : Tacx – Neo Direct Drive スマートトレーナー